なんぶの里人 Vol.2

8 写真上・左から息子さん、真希さん、夫の佳介さん。 下・世界中でも鳥取と兵庫・島根の一部にしかいないサンインサンショウウオの成体。 住み始めて気づいた 普通に“お宝”と会える南部町 南部町に生息するゲンジボタル、オオサンショ ウウオなどの観察会や、希少な在 来生物を守る ためのザリガニ釣り。(財)日本自然保護協会登 録の自然観察指導員として活動す る桐原真希さ んは、自然観察や自然体験ガイ ド地元の人と 連携した保全活動を通し、里山 の魅力環境維 持管理等の大切さを伝えている。 鳥取へのIターンは1999 年。東京農業大 学時代、学内サークル 「野生動物研究会」で出会っ た夫の佳介さんが、米子水鳥公園 の指導員に転 職したのをきっかけに、夫婦で 米子市へ。その 4年後の2003年、南部町に移住した。 今や“里山の生きもの博士”と 称される真希 さんだが、南部町との縁は偶然 だった。現在は 水鳥公園の統括指導員を務める佳 介さんと真希 さんにとって、地域の自然や生き ものの探究は ライフワークとなっている。 「よく“生きものが好きだから南 部町に移住し たんですね”と言われますが、実 は住宅ローン が返せそうだから来たんです」と屈託なく笑う。 佳介さんの職場に近い米子で暮らした4年間は、 賃貸アパート住まい。転入の翌年 に第1子が誕 生し、手狭になったため戸建て住宅購 入に踏み 「水き鳥っ公た園。から車通勤で片道 ~ 分。私が歩 いて行ける範囲に、子どもの保育園や学校、スー パー、図書館が集まるなど、夫婦の希 望に叶う 物件が、南部町で見つりました」 ところが、新居で暮らし始めると、こ の里山 は生きものの宝庫だった。中でも、豊 か自然 環境の証のブッポウソウ(町の鳥)、 オオサンショ ウウオ、コハクチョウ。この3種が、同じ自治体 に生息しているのは、全国でも珍しい。 地域の生きものの 多様性・面白さを共有したい 「近所で希少な小型サンショウウオが繁殖してい るなんて、環境を保つ方がいてこそ。田んぼや水 路、森林の手入れをしてくださる方たちに感謝し ています」と語る。また、鳥取県が 年毎に改訂 発行する、絶滅のおそれある野 生動植物をリス トアップした『レッドデータブ ックとっとり/ 2002年版』では、真希さんがこの地で確認し たカワセミやフクロウが、存在していないことに なっていた。 「その時、生きもの好きのスイッチが入りました ね。身近な生きものをちゃんと見て撮影、記録、 標本作りなどの資料に残さなければと」 その後は、レッドデータブックのリスト編さん にも、夫婦で関わっている。 米子で生まれた長女は、今春、鳥取環境大学の 四年生。南部町で生まれ、サンショウウオの巣穴 掘りが得意な長男は、倉吉農業高校を卒業し鳥取 農業大学校へ進学する。2人とも家の近くの水路 で魚やサワガニを採り、庭先や田んぼのカエルに 触ったりしながら、のびのびと育った。 「たまたま私たちの暮らしと、町の相性が良かっ たと思いますが、ここで子育てができて満足です」 とふりかえる真希さん。地区長や学校PТA役員 の任期、子どもたちの受験期にはセーブしながら も、自然や生きものの面白さを伝える活動を続け てきた。今年4月からは、主催事業の『なんぶ生 きもの探検隊』がスタート。小学校児童放課後 に参加できるよう、午後に開催する。 「実は自然が一番危険で、野生の動植物には恐さ もあるけれど、そのリスクを知った上で生きも のの魅力を地域の人たちと共有できればと願て います。生きものは面白いとい うアンテナのス イッチが入ると、映画やアニメの楽しみ方がふく らみ、普段生活も楽しくなりますよ」 自分の好きな事を 仕事にできる 豊かな里山暮らしを実感 桐原 真希さん 家族構成・夫/子2人 神奈川県から米子市を経てIターン 自然環境×里人

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