89 第8章 登山の運動生理学とトレーニング の値を示すものである。歩きにくい道(雪渓,岩場, 藪なども含む)であったり,気象条件がよくない場合 には,その程度に応じてエネルギー消費量は増加する。 図5の式では,行動中の消費エネルギーを①山側, ②人間側の二要素に分け,両者の積により求める。② は人によって異なるが,①は各コースに固有の値とい えるので,これを「コース定数」と呼ぶ。これは,当 該コースを歩いたときのエネルギー消費量の大きさ を,科学的な数値(係数)で表したものである。最近 ではコース定数を表示したガイドブックも刊行されて いる。 従来のガイドブックでは「体力度」という表現で, 初心者向け,一般向け,健脚向けなど3~5段階のラ ンクづけをしていた。しかし区切りが大まかである上 に,執筆者によってばらつきもある。コース定数を使 うと,日帰りから3泊程度までの登山を,1~ 100 程 度の数値で表せるので,各人の体力に応じてきめ細か なコース選びができる。 現在,長野県など山岳県のホームページには,図6 のような「山のグレーディング表」が掲載されている。 縦軸を体力度,横軸を難易度として,主な登山コース をランクづけしているが,体力度の設定にはコース定 数が使われている。 横軸の方は,鎖場,岩場,雪渓,悪路などの技術的 な難易度を表す。ただし,このような箇所を通過する 際には運動強度も上がるので,より高い技術だけでは なく,より高い体力も必要である。A,Bのコースを 標準的なタイムで歩く場合,上りではおおよそ7メッ ツの体力を求められるのに対して,C,D,Eコース の難路の部分の上りでは8メッツ程度の体力が必要で ある。 初心者は,左下の欄にランクされたコースから登山 を始めるようにする。そして同じランクのコースで何 度か登山を行い,支障なく歩けるようになったら,一 段階上あるいは一段階右のコースへと進む。このよう な手順を繰り返すことで,無理のないステップアップ ができる。 ▶指導のポイント コース定数や山のグレーディング表を活用するこ とで,無理のないステップアップができる。 9 体力トレーニング (1)考え方 1週間のうちの何日間か,一定の時間を割いて運動 をすることがトレーニングだと考える人が多い。しか しこの考え方は正しくない。また,登山に限らず全て のスポーツにおいて,これさえやっておけば万全,と いう体力トレーニングのメニューは存在しない。 図6.山のグレーディング表 (長野県のホームページより引用・加筆) 長野、岐阜、新潟、山梨、静岡、群馬、栃木、山形の各県のホームページ に掲載されているほか、石鎚山や白山でも同様のグレーディングが行わ れている。体力度1はコース定数が1~10、体力度2はコース定数が11~ 20というように対応している。 (文献1のp.57,674-675を参照) 難易度(A~E) 10 基本的に 7メッツ の体力 が必要 基本的に 7メッツの体力 が必要だが、 難所の部分 では8メッツ の体力が 求められる 長野,岐阜,新潟,山梨,静岡,群馬,栃木,山形の各県のホーム ページに掲載されているほか,石鎚山や白山でも同様のグレーディ ングが行われている。体力度 1 はコース定数が 1 ~ 10,体力度 2 はコース定数が 11 ~ 20 というように対応している。 (参考文献 1 の p.57,674-675 を参照) 全面性とはオールラウンドな身体づくりをすること,漸進性とはト レーニングの量や質を徐々に増加させていくこと,個別性とは個人 の体力特性に配慮すること,反復性とは適切な休養をはさんで疲労 を回復させながら継続的に取り組むこと,意識性とはそのトレーニ ングがどのような身体能力を改善しようとしているのかを本人が自 覚して行うことを言う。 (参考文献 4 の p.19 を参照) 図6 山のグレーディング表 図7 トレーニングの原則 (長野県のホームページ https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/.../ gure-dexingu.html より引用・加筆) (浅見,1985) 図7.トレーニングの原則 (浅見,1985) 全面性とはオールラウンドな身体づくりをすること、漸進性とはトレーニングの を徐々に増加させていくこと、個別性とは個人の体力特性に配慮すること、反 は適切な休養をはさんで疲労を回復させながら継続的に取り組むこと、意識 そのトレーニングがどのような身体能力を改善しようとしているのかを本人が て行うことを言う。 (文献4のp.19を参照) 全面性 個別性 反復性 意識性 漸進性 体力度( 1~ )
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