JARCLIVE9

JARC LIVE 61 三重県志摩市阿児町神明 731 URL:https://www.miyakohotels.ne.jp/shima/ いません。伊勢海老のほかに地元で獲れた小海老などもい れています。チキンブイヨンと野菜、ワインも加えています。 お米、仕上げにコニャックです。 ―ふんだんな食材を使われていますね。 高橋シェフの教えには“ケチな人はおいしい料理は作れ ない”という考えがあります。おいしい、納得できるお料理 を提供するために、そして今もなお、愛され続けている伝 統の味をそのままに次世代にも受け継いでいくことが使命で あると認識しています。こよなく愛し続けてくださるお客さまに “味がかわったね”と言われないようにするためにも、レシピ を徹底的に守り続けることに徹しています。 ―次世代にもこの意志を伝えていらっしゃるのですね。 味が変わらないようにするためにチェックを重ねています。 ポイントはフランス料理のビスクと異なるブイヨン作りです。通 常、ビスクの出汁は魚類でとるのですが、高橋シェフは鶏 を使用しました。私も鶏の旨味と伊勢海老の香ばしさがとて も合うと考えています。このブイヨンはスープのほかに海の 幸のカレーや野菜に火を通す時など、さまざまな料理で使っ ていますので、まさに志摩観光ホテルのフレンチのベースに なります。だからこそ、レシピ通りに作り上げていくことが大 切なのです。 雑味のない透き通ったブイヨン作りに全神経集中 ―どのように作られるのですか。 当ホテルのブイヨンは同じ行程を2 度くり返すダブルブイヨ ンです。2倍の食材を使うので味の深みが違います。1回 当たり火を入れているだけでも3 時間かけています。そして それを冷まして翌日同じ工程をおこないます。これにより澱 みのない透き通ったチキンブイヨンを作り上げていきます。チ キンブイヨン作りの専属スタッフはいませんので、担当は変わ ります。体調やモチベーションによって味の感覚も変わりま すので、先輩や上司など複数で味のチェックをしています。 とにかく手を抜かないことが大切なのです。また地元産の 小海老もいれますので、季節により小海老の味も変わります。 さらに大切なのはお米です。お米は濃度を出すために使用 していますがスープの仕上がりの目安にもしています。その お米を炊きすぎると食感が悪くなりますし、炊き方が弱いと 濃度が薄くなります。ほかの作業をしながら同時進行してい ますので、ついつい目が離れてしまうのですが、わずかな 時間のブレも許されないのです。さらにエビをミキサーにか けるときも同様です。砕きすぎると海老のえぐみが出てしま い、砕きが弱いと味が薄くなってしますのです。経験が豊 富な者との差がでないように、細部にわたりチェックを繰り返 すことで、変わらない味をお届けできればと思います。 ―最後に今後、挑戦していきたいことをお聞かせください。 先々代が作り上げてきた「海の幸フランス料理」を継承 し、“伊勢志摩を訪れて良かった”と言っていただけますよ う、新しい調理方法にも挑戦して作り上げていきたいと思い ます。志摩観光ホテルはいつきても楽しいお料理があると感 じていただけばと思います。またあまり知られていない三重 県の海の幸であるガスエビ、山の幸であるイノシシやシカな どのジビエ料理など伊勢海老、鮑、松坂牛だけではない お料理もご提供できればと思います。ホテルイベントとして今 年の 4 月3日に開業 70 周年を迎えるにあたり、晩餐会企 画も計画中です。また現在、歴代シェフの個性が愉しめる コース料理をレストランにてご提供しています。高橋シェフに 始まり、第6代総料理長の宮崎シェフ、そして 9 月からは私 が担当いたします。ぜひ、多くのお客さまに足を運んでいた だきたいですね。 樋口 宏江氏 志摩観光ホテル 総料理長

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