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54 5 ~コントローラーボタンで消火器や消火栓 による模擬消火がリアルタイムで体験~ 会員ZOOM UP 火災はホテルにとって大惨事となるという認識はあるものの、防災意識を高める活動に積極的ではないホテルが多 いのが実状だ。1982(昭和 57)年、同時中継された「ホテルニュージャパン」の火災は多くの関係者の脳裏に 焼き付いていることだろう。宿泊業界の防災意識を高めるために尽力している㈱日本防災技術センター前田利幸専 務取締役に現状と取り組みをお聞きした。 人々の生活の暮らしを守る一貫した活動を行なってい る㈱日本防災技術センターの歴史は1967(昭和 42) 年にさかのぼる。2009(平成 21)年に現社名に商 号変更後は全国に拠点を構え、最先端技術を取り入れ た防災訓練を行なっている。 「ホテルや旅館では、年 2 回以上の消防訓練の実 施義務があります。お客さまと従業員の命を守るために、 普段から従業員の防災意識を高めて、非常時に冷静な 判断と行動がとれるように定期的な訓練の実施は欠かせ ません」(前田利幸専務取締役)。 しかし現状は「面倒くさい」「恥ずかしい」などの心理 から真剣に取り組めない従業員や積極的に参加する人 が少なく、経営陣は訓練が年中行事的な訓練に終わり、 非常時への対応に不安を抱えているという。緊張感の 欠如は地震と比較して火災体験が少ないことや地震の 被災地の様子を画像で目の当たりにしていることにある。 この背景から「火災体験ができる訓練」「映像で可 視化できる訓練」が最も効果的で緊張感のある訓練に なると考えた。 課題解決に向け自衛消防隊員の行動をきめ細かくシ ミュレートしたシナリオ作成から防災機器の実操作を交え た実践的な行動訓練に加え、施設内に煙体験ができる 装置を設定した避難訓練は、参加者はもとより消防署か らも高い評価を得ている。 実体験としてはARスコープを用いた「火災煙体験訓 練」を行なっている。大型の体験装置を持ち込む手間 は要らず、手軽で参加者の防災意識向上に優れた効果 が期待できる。このアプリは、消防署が行う火災救助 訓練として実際に取り入れられており、効果は実証済み だ。 ARとはAugmented Reality(オーグメンテッド・リア リティ)の略で「拡張現実」と訳され、コンピューター により現実の映像にデジタル情報を重ねて表現する技 術だ。2016 年に販売された「ポケモンGo」が代表的 だ。この技術を活用し、現実空間に模擬火災映像を重 ねることで火災体験を可能にしたのが火災煙体験アプリ 「ディザスター・スコープ」だ。体験参加した消防職員 からも普段の訓練でぜひ使用してみたいという要望があ るほど、インパクトのある火災を再現する。 ゴーグル形状のヘッドマウントディスプレを被ると、今 居るその場に火災が発生。頭の動きに合わせた360 度の立体映像を見ることができるため、高い意識を持ち ながら集中した訓練が可能となっている。手に持ったコン トローラーのボタンを押すことで、ビデオスルーによって 映し出された現実空間で、消火器や消火栓による模擬 消火がリアルタイムで体験できるのも特徴の一つだ。 天井面に発生した白煙が時間経過とともに徐々に降 下し黒煙に変わり、80cm程の高さまで煙が滞留して空 気層との境目ができる様子は、まさに現実の火災現場。 普段見えていたはずの出入口や誘導灯の明かりが見え なくなり、想像以上に見通しが利かない状況は、思わず 身を屈めるほどの臨場感にあふれ自然と鼓動が早くなる のを感じさせる。体で覚える訓練のすごさ、迫力満点の 体験を可能としたのだ。今後は水害時の避難の困難さ を体験できる浸水体験型も検討しており、防災訓練へ の幅広い活用を目指しているという。 「誰かに守られるのが防災ではなく自分自身を守ること の大切さを、一人ひとりが認識できるこうした訓練を通じ て、日本防災技術センターはホテル業界が抱える防災 面の課題を共に考え解決へ向けて積極的に取り組んで います」 AR 技術で新たな消防訓練に取り組む 株式会社日本防災技術センター ㈱日本防災技術センター 専務取締役 前田 利幸氏 札幌市北区北 10 条西 4 丁目 1 防災ビル TEL:011-736-1100 E-mail:nihon.bgc@ni-bousai.co.jp URL:https://www.ni-bousai.co.jp

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