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32 宿泊業界もこれからはテクノロジーが共存する時代になるという認識を 宿泊施設業界においてテクノロジーは欠かせない存在となった。この度の新型コロナ感染症により「非接触」が対面サー ビスを主とする業種にも求められ、今後、いち早く非接触という課題解決をしなければ命取りとなる可能性も秘めている。 そこで宿泊管理システム(PMS)を中心に宿泊施設に必要なソフトウェアを開発している㈱タップ 藤原猛氏に宿泊施 設におけるテクノロジー導入の現状と未来について講義いただいた。 ~オペレーション、ホスピタリティ、人材、健康 4項目のレベルアップ必須~ 【日本工学院ホテルコース特別講義】2020年11月19日 宿泊施設のテクノロジー導入の現状と未来 実現する、できることを考えることが大切 はじめに私自身の今日までの経緯をお話します。私の 一族は台湾で日本の海軍における通信部門で軍職に従 事していため、子供の頃から外国の話を聞かされていた ことに起因します。国々の歴史や食文化をはじめとして 楽しいことに触れてみたい、世界中へ行きたいと小さなこ ろから思い描いていました。初めて海外へ行ったのは高 校2年生のときです。アルバイトでためたお金で2泊3日、 1 万 9800 円、韓国への一人旅です。 旅行業に就職し、世界中の様々なホテルや文化など に触れ、その後、テーマパーク業の経営再生や事業開 発に携わり、現在、宿泊施設業に向けたソフトウェアを 開発するタップの「ホスピタリティサービス工学研究所」 で仕事をしています。ホテルのテクノロジーの分野でこれ まで経験してきたことを生かすことができたのです。経験 にム はないことを確信しました。 2015年7月、長崎のハウステンボス内に開業した「変 なホテル」の企画に2012 年ごろから参画しました。“ 世 界一、生産性の高いホテルを創ろう”という中で、生産 性を高めるためにどのようにすべきか思案した結果、ロ ボットなどのテクノロジーを導入することに行き着いたので す。 私自身の考え方として実現する、できることを考えるこ とを大切にしています。求められていることに対して、ど のようにしたら実現させることができるのか、どうしたら楽 しんでもらえるのかなど、できる限り「できる」を考え「で きない理由を考えない」ようにしています。仕事に限ら ず、自分の生活でも常に同じ様に考えています。そうす ることでプラス思考に捉えることができるからです。結果、 世界初のロボットホテルを実現することができたのだと思 います。 人的サービス化と ITを使い分けたハイブリッド型に さて、ここから本題に入りますが、今回の講座では「サー ビス業にみられるテクノロジーの重要性」「ブランドコンセ プト(ブランディング)の構築」「テクノロジー導入の現状」 「テクノロジーの未来予想図」の 4 つのテーマでお話を 進めていきます。 始めにホテルオペレーションの過去、現在、未来につ いて考えましょう。 過去のオペレーションは宿泊者が宿帳に記載して管理 するというものでした。旅館では客室で宿泊者が住所や 名前を帳簿に記載していました。運営においてはマンパ ワーがすべてで、人が存在しなければ成り立たないもので した。しかしながら単純な作業という意識が強かったこと から一部の経営に携わる人材を除いてクリエイティブな考 えは必要とされてきませんでした。それどころか過酷な労 働の割には対価が低いため一般人材においては組織に 対して帰属性を高めることができず職場を転々することが、 当たり前の業界でした。過去には体調管理においても 100%自己依存という様な風潮が一般的でした。 90 年代半ばからコンピューターが主流となり、JRや航 空券の発券などCRSと言われる機器を操る人材が求め られるようになりましたが、ホスピタリティサービスにおいて は以前と変わらず人的サービスで解決する状態が続いて いました。加えて宿泊業界は他の産業と比較して労働賃 金が低いことからも昨今の人材不足に陥ったと考えられま す。そうなると必然的にサービス品質の低下は避けられま せん。しかしながらホテル運営を継続させていくためには 帰属性を高めて人材確保をしていかなければならないと考 え、組織として福利厚生を手厚くし、自己依存度が高かっ たスタッフの健康維持も視野に入れ、フィットネスの無料

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