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JARC LIVE 25 TAP AWARDS 旅館業の『共創』という新しい役割 タップアワード 学生賞 ≪要旨≫ 観光業は地方創生の大きな柱であった。しかし、新 型コロナウイルス感染症が拡大し外出自粛や入国拒否 の政策がとられ観光業は大きなダメージを負った。ま た、感染拡大前の状況に戻るには数年を必要とし、 地方創生というものを再度考え直さなければならな い。旅館業は従来の快適な施設・サービスの提供と いう役割だけではなく、地域を活性化する拠点の役割 を果たせるのではないか。ホテル・旅館内にフュチャー センターを設置し、それを通して都市部の人と地方在 住者を繋ぐことで、新たな付加価値を生み出す産業や その土地特有の課題を共同で解決するきっかけを提供 することができるのではないか。それらは、短期的に は副業者の増加によるリピーター獲得、長期的には地 域の魅力の創出というメリットが旅館業にはあるので はないか。旅館業は、これから「つ・く・り・だ・す」 という役割を果たし、地方創生の玄関口としての役割 も果たすべきである。 歴史あるタップアワードの第 13 回の学生賞に選出していただき大変う れしく光栄に思っています。正直、受賞が決まったメールを頂いたときは 今まで感じたことのない雷に打たれたような衝撃を受けました。青天の霹 靂とはまさにこのことを指すのか思いました。私はこれまで理系単科大学 で生命科学について学ぶとともに、素人に毛が生えた程度ではあります が社会学について学びを深めてまいりました。これまでに学んだ知識を総 動員して今回の小論文では旅館業と地方創生に着目し、旅館業の新し い共創という役割について述べました。今、旅館業はCovid-19 蔓延と いう苦境に陥いり、観光という主柱をなくした地方創生も再考しなければ なりません。その一助に私の提案が微力でも貢献することができたら幸い です。 この小論文を書くにあたって、友人や先輩に多くのご助言をいただき 感謝し御礼申し上げます。今回の受賞を励みに本職である生命化学に 一層邁進してまいります。 profile つのだ・たかし 2000 年東京生まれ。 2018 年に東京工業 大学生命理工学院に 入学。生命科学の学 びを深めるとともに、大 学院の社会学ゼミに参 加し政府の意思決定の プロセスについて勉強 を重ねる。2020 年の 11 月からは同院の研 究室に所属し細胞制 御に関する研究をする 予定。 ≪所属≫ 国立大学東京工業大学 生命理工学院 学部三年 角田 貴史氏 ≪氏名≫ タップアワード 学生賞 受賞コメント はじめに 地方創生と旅館業は切っても切れない関係である。ど ちらかが欠けても上手くいかない自転車の両輪のような存 在である。しかし、バブル崩壊後、地場産業はコスト削 減から競争力が低下、また大都市への人の流出による後 継者不足で存続の危機を迎えている。地域に根差した技 術や伝統は重要な観光資源であると同時に、雇用を生む ものであり後世に継承し守る必要がある。一方で、新た な産業の創出や、既存の産業をさらに飛躍・展開させて いくことは新たな観光資源になるため、これらも同様に重 要なことである。 本論文では地方創生の現状の問題について指摘し、 地方創生においてホテル・旅館の役割について考えてい く。 地方創生への問題意識 地方創生の背景には、急激な人口減少と高齢化が挙 げられる。2014 年に閣議決定された「まち・ひと・しご と創生「長期ビジョン」」では、国民希望出生率 1.8% を達成すべく、出生率の低い一極集中する東京から地方 に人を移動させることが挙げられている。東京圏への転 入超過数の大半は若年層であり、2019 年は 15 ~ 19 歳(2万5千人)と 20 ~ 29 歳(10 万7千人)を合わ せて 13 万人を超えている。 (1) 合計特殊出生率の最低が 1.15(東京都)、最高 が 1.86(沖縄県)である。地方に行くにつれて出生率 が高い傾向があり、特に四国、九州地方の出生率が高 い。この少子化と地方の転出超過に伴い、日本創成会 議は2014 年に「2010 年から2040 年にかけて、20 ~ 39 歳の若年女性人口が 5 割以下に減少する市区 町村」いわゆる消滅可能都市に国の市区町村 1,799 の うち、半数近い 896が当てはまると指摘している。地方 の衰退に脚光が集まる中で、一方で、アンケート調査に よると、東京圏在住者(20 ~ 59 歳)の約半数が「地 方暮らし」に関心を持っていること、地方圏出身者の方 が東京圏出身者よりも関心が高いこと、全体的に若者の

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