JARCLIVE9

22 ホテル業界 医療業界 収入形態 値決めは可能 顧客より直接収入あり 値決めは困難 顧客より直接入る収入は一部のみ (残りは保険者より2ヶ月後に入る) 顧客ニーズ 「快」の提供 「プライバシーの確保」が最低限 「治療」の優先 まずは「安全確保」 図1 ホテル業界と医療業界の違い ればならないことになる。 c)経営悪化の要因② 国内客の需要低下 インバウンドの需要減を国内客で補う必要があるにも関 わらず、ホテル業界では、日本人ビジネスマンによる宿泊 や宴会の利用客、あるいはレストラン利用客が減少してい る。その影響は、新型コロナウイルスが全国で発生して いることからも、国内におけるエリア特性はなく、またホテ ルのグレード・業態・知名度などとも一切関係がないと推 測する。つまり、北海道から沖縄までのあらゆるすべての 旅館・ホテルが同様の苦境に置かれているのである。 d)コロナ禍におけるホテルの運営対策 ホテル業界はこれまで述べてきたとおり、コロナ禍にお いては、訪日外国人旅行客の減少や、国内旅行の需要 も減少し、宿泊者数は下火傾向にある。その中でホテル 業界においては「テレワーク応援プラン」と称して、客 室の時間貸をして日常的な利用ができるようにし、宿泊以 外の集客ができるサービスも導入している。 また、新型コロナウイルスの軽症患者の受け入れ施設 や、医療従事者の優先受け入れ施設として運営している ホテルもある。 (2)医療業界 a)コロナ禍による医療業界の実績 新型コロナウイルス感染症の影響で病院経営は厳しく、 全国の 3 分の 2 の病院が赤字に転落している。とりわけ 東京都に所在する病院では非常に厳しい状況にあり、新 型コロナウイルス感染患者を受け入れた病院の 9 割が赤 字に陥っている3)。特に、急性期病院の経営悪化が著 しい。 b)経営悪化の要因① 患者減少 経営悪化の要因としては、自粛・緊急事態宣言による 外来患者の減少が考えられる。コロナ禍において通院や 内服の継続が必要な患者も感染を懸念して、受診を控え る傾向にあるのだろう。これを一言でいうならば「患者の 受療傾向と行動の変容」である。また、医療機関側も 意図的に 30日処方の人は90日処方にするなど、長期 処方に切り替えている場合もある。 その他、救急患者や手術数も同様に減少している状 況にある。 c)経営悪化の要因② 運営費の増加 感染対策に伴う医療材料費の増加も、経営悪化の要 因である。例えば、コロナ患者を受け入れるために、医 療機器を追加購入する施設もある。その他、マスクや防 護服等の使用量は増え、同時に医療物品によっては通 常価格より一時的に高い値段がついた物もある。総体的 に、運営費が増大しているのである。 また、特別勤務手当の支給や、感染拡大防止のため に割かれる非効率な病棟・外来運営による人件費の増 加も運営費の増加につながっている。 d)コロナ禍における医療機関の運営対策 医療機関では、感染拡大防止や感染者の受け入れと 同時に経営改善を図っていかなければならない。Webを 使用した遠隔診断の推進などに取り組んでいる医療機関 もある。しかし、率直な意見として医療機関は、コロナ 禍の変化へ十分に適応できていない印象である。むしろ、 国からの助成金を頼りにしている感もある。 ニューノーマルとして、患者数が以前のとおり戻ること はないとの意見も多い。今後は、医療も個人の力に頼る のではなく、組織の仕組みで新しい価値観に沿った新サー ビスを検討していく必要があろう。 3)ホテルと医療業界との共通点 ホテル業界と医療業界とは異なるようで、共通点も多 い。その共通点を以下に示す。 a)サービス・インフラ業界 両業界ともサービス・インフラ業界に分類される。サー ビス・インフラ業界は、多くの分野が含まれており、その ビジネスモデルも多彩と言える。共通するのは、「持って いる経営資源(モノやヒト)を生かして、顧客に価値のあ るサービス(無形のモノ)を提供することで収益を上げる」 という点である。 b)労働集約型産業 両業界とも運営費における人件費の割合が大きく、労 働集約型産業といえる。どちらもシステムだけではなく、“ヒ ト” が重要な役割を果たす。 c)海外在住者との関わり(インバウンドビジネスの 需要) ホテル業界では、昨年までインバウンドビジネスが右肩 上がりであった。医療業界もメディカルツーリズムなどの海 外の患者を取り込む医療機関も増加している。将来、国 内の人口減少が避けられないならば、海外へその需要を 拡げるのは必然と考える。 4)両業界の違い 次に、両業界の違いをまとめたのが図1である。以下 に詳細を示す。

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