JARCLIVE8

8 理を運ぶことはサービス業ではなく“運搬業”となります。 サービス業というのはあくまでもお客さまと接する部分であ り、料理を運ぶという部分はサービス業ではありません。 運搬業の部分までサービス業という括りにすることにより労 力的にもきつく、また生産性も下がります。1人の人間が 運搬業もしているわけですから。 もし、ここをテクノロジー活用と切り離して考えることができ るとすれば、本来のお客さまへの接客を仕事としたサービ ス業に専念することができますし、運搬業務がなくなります ので、1人で多くのお客さまに対応できるようになります。こ の部分をまずは整理することが、テクノロジーとともに歩むこ れからのホテル業のあるべき姿が明確となり、必然的に学 校や職場で教えるべきことが明確化するのだと思います。 これからは1 つのホテルでテクノロジーを理解している 人材が1割、サービススタッフが 9 割の割合で運営するよ うになるのではないかと思います。サービス業ではない部 分の業務を仕分けできテクノロジーに代替させる知識があ れば、サービススタッフは本来の業務であるお客さまへ顧 客満足につながるホスピタリティを提供することができるは ずです。これからはホテル人材としてテクノロジーを理解 し、顧客満足につながるエンジニアリング力を備えたホス ピタリティサービス工学の視点が不可欠だと思うのです。 小畑 サービスの仕分けは確かに必要です。ホテリエと して本来やらなくてはならないことが明確になります。それ によりホテル業界に対するイメージも変わります。 自社ホテルの基礎体力を明確にジャッジ 林 運搬業とサービス業を仕分けすることで、これまで サービススタッフ1人で4、5テーブルしかできなかった対 応が 10テーブルできるようになるかもしれません。レクサス の工場ではエンジニアは終日、移動することなく同じ場所 で整備作業を行なっています。それは必要な部品がエン ジニアのところに自動的に届くという自動化を図っているか らです。わざわざ工具などを取りに行く必要がありません ので、時間的ロスを軽減させ、集中して取り組めますの で生産性も高まり、労力という点でも働き手に優しい環境 を作り上げています。 少し視点が異なりますが、東南アジアのペニンシュラホ テルでは客室内にコックピットのようなものがあって、全世 界の放送を聴くことができますので手厚いサービスはなくと も、客室で十分に楽しむことができます。エンターテインメ ントを際立たせることにより、宿泊する目的が泊まるから楽 しむへ転換させることができ、結果的に売り上げアップに つなげられます。 また経営的に厳しい現状の中、損益分岐点を下げ、 いくら売り上げたら経営が成り立つのかを思考するととも に、本当にこのホテルの基礎体力はどのくらいなのかを見 極めることも大切です。その上で合理化すべきところ、投 資すべきところ、基礎体力を維持するための人材配置な ど、本来はホテル側に考えられる人の存在が不可欠です が、もし不在ということであればホテルの内情に詳しい外 部の人に依頼して、あらゆる業種におけるサービスとテク ノロジー化の仕分け作業をすべきだと思います。 小畑 林会長のおっしゃるように、賃金を上げるための合 理化や人員整理ではなく、エンターテインメントという要素を 軸にすることにより少人数で生産性を高めることができます。 これからはますます思考の柔軟性と何かと何かを結ぶエン ジニアリング力を養うためのカリキュラムは必要ですね。 遠山 その点で今回関わっている日本工学院専門学校 の取り組みは、林会長のご支援、アドバイスをいただき、 これまでのホテルスクールと違う目線に立ったカリキュラム を組んでいます。実務で使われているPMSの仕組みの 理解と実際に使われているPMSを使った講座を取り入れ ることで、ホテル運営やマネジメントを学ぶことができます。 また総合専門学校であるメリットを生かして、蒲田キャン パスに現存している22 学科 74 分野(2021 年度)の専 門コースとのコラボレーションを行ない、イベントやAIを取 り入れた授業を行なうことにより横軸で考えられる力、つま り林会長のおっしゃるエンジニアリング的な発想の醸成や エンジニアリングの発想にともなう、これからの時代を担う 若者たちが考える新たな仕組みを構築できることにつなが ると考えています。 多様な時代に対応するために、ひと言でいうと「次世 代のホテル業界を担うホテリエ」の育成を目指しています。 ホテリエとして最も大切なホスピタリティとインバウンド対応 の語学力を身につけた上で、ホテル運営そしてマネジメン トも遂行できる人材を育成したいと考えています。 ホテル業界で活躍する若者に表彰状を 石塚 卒業生でホテルに就職後、コンピューター会社へ 転職し、またホテル業界に勤め、現在ホテルの総支配 人として切り盛りしている女性がいます。コンピューターの 理論や実務を学ぶことで効率的に生産性を上げるための マーケティングと解析ができるなど、左脳を発達させること ができます。これからの時代、トップに立つホテリエは右脳、 左脳ともにバランスが良いこと、つまりシスティマティックに

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