JARCLIVE8

58 ―私もキャピトル東急ホテル時代によくランチタイムにコー ヒーハウス「オリガミ」のパーコーメンを食べにきました。 何とも言えないこってり感が今でも食感として残っていま す。東京ヒルトン時代から40 年以上、名物料理として存 在しています。はじめにパーコーメン誕生の経緯をお聞か せください。 究極の一品としてパーコーメンを取り上げていただくにあ たり、誕生経緯の記録が十分にないことと、あいまいな回 答ができないと思い、当時のことを知っている諸先輩からの 伝聞も含めてお伝えいたします。パーコーメンの発案者は 東京ヒルトンホテル時代、当時のスイス人総支配人であった リチャード・ハンデルです。誕生は 1970 年ごろにさかのぼり ます。発端は当時のコーヒーハウスであるオリガミに名物料 理を誕生させようと総支配人の指令がでたことに始まります。 ―当時、コーヒーハウス「オリガミ」はどのような位置づ けだったのですか。 今でいうホテルのオールデイダイニングです。時間を問わ ず気軽に飲食できる場所として営業していました。ヒルトン ホテルそのものがとてもフレンドリーな気質だったと聞きますの で、その雰囲気がよく表れた店舗であったのだと思います。 ―ホテルのコーヒーハウスでラーメンというのは、日本のホ テル業界の認識から考えると奇想天外な発想ですね。 ラーメンにいたった経緯は外国人である総支配人がスタッ フに対して、日本人の好きなものは何かというヒアリングを行 なった結果、「ラーメンです」と回答する声が多く上がった ことによります。誰もが気軽に立ち寄れるオールデイダイニン グに日本人の好きなメニューがないのはおかしいという考え から、ラーメン開発の指令が下ったのです。当時、中国料 理レストランである「星ヶ岡」にもラーメンメニューはありまし た。またホテルのコーヒーハウスでラーメンを売ることはあり 得ないという反対意見が社内から多くあがりましたが、総支 配人の意向としてラーメン開発がスタートしたのです。星ヶ 岡とは異なるラーメンを開発しようと、内外の中国料理レスト ランにお願いするとともに、ガルドマンジェやメインキッチンの 洋食の料理人も加わり、オリガミにしかないラーメン開発を 進めていったのです。その中で中華スープと洋風テイストを ブレンドしたスープが完成、さらに時間がたっても伸びにくい 麺が誕生したのです。 ―内外の中国料理レストランや洋食料理人が料理のジャン ルを超えて開発したからこそ、生まれた味と麺なのですね。 当初はテスト的に季節メニューとして肉そば(ラーメン)、 海老そば、シナチクそば、五目そばなど、6~7種類のラインナッ プがあり、その一つとしてパーコーメンがありました。発売当 初は“なぜ一流ホテルのコーヒーハウスでラーメンを売るのか” というご意見や、様子を伺うお客さまも多かったようです。“コー ヒーハウスでラーメン”というユニークな発想が雑誌社の目に 1970年代、スイス人総支配人の 指令で誕生したどっしり胃袋支える 当時2000円の高額ラーメン 1963 年、日本初の外資系ホテルとして誕生した東京ヒルトンホテル。その後、1984 年よりキャピトル東急ホテルとし て運営、2010 年 10 月 22 日、全面建て替えとともに「ザ・キャピトルホテル 東急」として新たなスタートを切った。 新生後、早くも 10 年目を迎える中、いまだ愛され続けている一品がある。それが「パーコーメン」だ。曽我部俊典総料理 長に誕生秘話、そして次世代へ受け継ぐ思いをお聞きした。 『パーコーメン』コーヒーハウスでラーメン? 伝統の逸品

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