JARCLIVE8

JARC LIVE 47 想像すると見えてくる未来もあると思います。 2018(平成 30)年 6月15日に旅館業法が改正されま した。この改正によりフロント設置の必要が無くなりました。 ホテルにおいてフロントは存在することが当たり前のことでし たが、フロントがなくとも営業ができることにより、チェックイン はフロントでという常識が覆されたのです。 やはり法改正で人間が対応しなくても ICT(情報通信技 術)により本人確認が認められるようになりました。従って今 後はホテルのフロントでチェックインしなくても空港で、無人 チェックインすることも新しい法律では可能となってきます。 コンピューターの処理能力は30 年で30 万倍になりまし た。コンピューターの進化はまだ続きますので、今は不可能 でも将来は普通にできることもあるでしょう。AI についても「言 語理解」が最も実用化が近いと言われていますので、言葉 の壁は近い将来なくなるでしょう。 通信の世界は5G の技 術を使って遠隔手術の実用化が見込まれています。遠隔で 手術ができるのなら、有名シェフが作るのと同じ料理を離れ た場所から100 人分同時に機械が作ることだって可能なは ずです。 今以上に高性能なコンピューターが動き、言葉の壁が無く、 ロボットが料理を作れるようになった時、便利になる反面、わ れわれにいったい何ができるのかを考えなくてはなりません。 多様な価値観があることを知ることが大切 帝国ホテルではしばらく前まで、電話交換台は新入社員 に適した仕事でした。ホテル全体の様子が分かり、その後さ まざまな部署に配属されても知識が役立てられるからです。 ところが今は、話したい人と直接携帯電話でつながるので、 友だち以外の人、特に年上の方々とのコミュニケーションの 取り方に慣れていない人が増えているため、電話交換台は 新人にとってハードルの高い仕事となりました。 今はコロナウイルスの影響で外国人客が来日できない状 況ですが、世界中のさまざまな価値観や習慣を持ったお客さ まがホテルにやってきます。皆さんには今から自分の友だち 以外に世界に対して興味を持ち、理解していく姿勢を心掛け てほしいと思います。 最後に私個人的に取り組みたいことをお話しします。まず は “ おいしいを科学すること” です。シェフの味覚で “ おいし い ”と判断してもお客さまの感覚は異なるかもしれません。お いしいを客観的にとらえるためには味覚の数値化が不可欠で す。なぜおいしいのか、どこがどれだけ違うか数値化できれば、 新商品の開発やレシピの継承につながります。また料理との マッチチングを数値で理解できれば、ソムリエでなくともワイン のご案内ができるので、お客さまの満足度も向上するでしょ う。 次に取り組みたいのは客室内のお客さまの過ごし方をデー タ化することす。私たちはずっとホテルで働いていますが、 実際にお客さまがどのようにお部屋で過ごされているかを見た ことがありません。部屋のどの場所で過ごされるのか、温度 は何度に設定されているのかなどさまざまな滞在中の様子を 数値化すれば、次回ご利用いただく際に活かせるだけでなく、 今まで気づかなかった理想の客室が見えてくるのではないか と思っています。 取り組みたい最後の点は、世の中に愛されるホテルを作り たいということです。帝国ホテルのサービスは一定の評価を いただいていますが、これはさまざまなお客さまによって磨き 上げられた結果です。今後、より重視される環境への取り組 み、サステナビリティの実現など、これからもお客さまに必要 とされ 200 年、300 年を迎えられるホテルになりたいと思っ ています。

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