JARCLIVE8

JARC LIVE 27 得るという、今もなお厳しい状況にあります。宿泊特化 型のビジネスホテルも大手チェーンの価格に押され、低 価格合戦を強いられる中、利益の確保が難しいなど、苦 肉の策も好転するまでにはいたっていません。 ―宿泊特化型はフルサービス型と比較して身軽さは ありますが、その一方で宿泊しか収益を得られず、 供給過多も含め、わずかな右肩上がりも難しいところ です。外国人観光客の再来がまだ見えない中、日本 人そして在日外国人を対象とした企画を打ち出してい かなければなりませんが、現状、在日外国人はどの くらいいるのですか。 約 280 万人と言われています。都内は港区に在住の 方が多いですね。あとは大使館関係者や留学生をはじめ、 様々な属性の方がいます。 ―箱根 DMO の話によると米軍基地に在住のアメリ カ人の観光客が増加傾向にあるということでした。在 日外国人の動きはいかがでしょうか。 群馬県水上温泉の「みなかみキャニオニング」や水 上ラフティングは在日外国人に注目されています。キャニ オニングは沢を下りながら全身で楽しむ遊びです。本格 的なコースでは20メートルの滝を身一つで降下するとい う圧巻のスリルを味わうことができます。コロナ禍で在宅 勤務や外出規制が続きましたので、体を思いっきり動かし たいという欲求を満たすことができることから、アクティブ な在日外国人にとっては魅力的なのだと思います。 皆さん、本国に帰国したくてもできない状況がまだ続き ますので、家族や仲間と楽しめる、日本ならではのアクティ ビティの提案は観光地活性化に有効的だと思います。 ―しかし、在日外国人にどのようにリーチすべきなの でしょうか。 媒体や SNS、富裕層が集まる機関に向けて情報発信 したり、インフルエンサーとして宿泊やアクティビティ体験 させることが近道です。例えば媒体では在日外国人向け の英字情報誌「Tokyo Weekender」があります。雑 誌では欧米豪をはじめ外国人が求めている「体験」に 関する情報を五感をテーマに外国人ライターが実際に現 地で体験して感じたことを外国人目線で紹介したりしてい ます。主な読者は在日各国大使館、会社役員などのビ ジネスエグゼクティブ、都内外資系ホテル滞在ゲストや ファミリーなど情報感度の高い外国人富裕層です。ま た米国企業を中心に 1000 社以上の会員で構成されて いる在日米国商工会議所へのアプローチや在日の方は facebookを見ていますのでそこへの発信もあります。 ―今のうちに在日外国人に向けたアプローチを強化 することで、それぞれの国の家族や友人に SNSを 活用して事前に日本のユニークな体験や外国人目線 で注目される自然や文化の情報を発信し、ゆくゆく緩 やかに外国人観光客が戻ってきたときの誘客につな がります。 そのためには体験型や同じ街に住みながらその街の新 たな発見ができる「マイクロツーリズム」を積み上げてい くことが、今、取り組むべきことだと思います。特に日常 の中での体験はNHK 総合テレビで2008 年から放送さ れている『ブラタモリ』的で教養を醸成させることで満足 度を得ることができます。注目しているのは『まいまい京都』 です。廃線マニアや橋梁エンジニア、庭師、トラベリン グコーヒーなど個性的なマニアの方がガイド役となり京都 の街歩きなどをする数時間のツアーを企画しています。ツ アー参加者は4 分の3以上が関西、うち40%以上が京 都市内在住者で8 割がリピーターです。ツアーに参加し たことがきっかけで配線や坂道の高低に興味を持つよう になるなど、これまで見過ごしていたことに新たな発見を 見出すことができます。ガイドは自薦ではなくさまざまなメ ディアなどから“ おもしろい!”という人材を見つけ出し、ま いまい京都側がガイドとして協力いただくよう説得している そうです。また地元ではなく外の目線を持った人たちに協 力を得、その街の魅力であり宝物を発見してもらうことも 大切です。日常の中での発見は地元の方は日常事です ので新鮮さを感じませんが、外の目からすれば宝物に映る かもしれません。このように今のうちに日本人そして在日 外国人が興味を持つことを発見し、観光資源化していく ことが必要です。 ―『まいまい京都』、ぜひ参加してみたいですね。「GO TOトラベル」キャンペーンで観光業も少し動き出し てきた感じがしますが、このチャンスを生かしていく ためにはどのようなことが必要なのでしょうか。 「GO TOトラベル」キャンペーンはある意味、瞬間風速 的な観光支援措置とも言えます。とはいえ、4月以来、 止まっていた時間がようやく動き出しました。大事なことは この瞬間風速をいかにとらえることができるかです。“ 大 勢来てくれて良かった!”と安堵せず、次なる手を打たなく ては穴の開いたザルと同じです。大切なお客さま情報が ザブザブと穴から零れ落ちてしまうだけです。ザルではなく 器にお客さまという大切な水を溜めていくためには、お帰 りになった後にいただいた個人情報をもとにメールや DM などを発信・発送することです。もしかしたら、コロナ前 と比較して本来の客層ではないかも知れません。GO TO トラベルだから来たと見捨てるのではなく、生涯のロイヤ ルカスタマーになっていただくために、お客さまに寄り添っ て、お互いに信頼度を醸成していくことが大切なことです。 この瞬間風速を次につながる、つなげていかなければな らない風であることをご理解いただきたいと思います。

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