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8 「お客様は神様です!」これからも存在し続ける のか?コロナ禍の今だからこそゼロベースで日 本のおもてなしを考える時が来ている。再ス タートを切った時の為に 新販売戦略の策定を わすれてはならない。 多難を乗り越えてきた日本のホテル 始めに直近 50 年の日本におけるホテルビジネスが遭遇 した危機につきましてお話をいたします。1964 年に開催さ れました第一回東京オリンピックを機にホテル建設が始まり ジャンボ機が飛ぶ時代になりました。旅行をするということを より身近に感じる時代になっていきました。多くのシティホテ ルがこの 20 年の間に全国各地に開業しました。そのよう なホテル環境の中で、バブル時はホテルのオキュパンシー (占有率)は 70%~ 80%、90%に達していました 1988 年ごろからバブル崩壊の影響を受け、オキュパンシーは 60%台に下がりました。バブル崩壊の直後には外資系ホテ ルの進出が始まりました。外資系ホテルの日本進出と戦い 続けた日本のホテルは、日本ならではのホスピタリティマイン ドで日本のホテルの素晴らしさを改めて再認識できる良い 機会を得ることができました。 ところが 2008 年にリーマンショックによりオキュパンシーは 40~50%レベルとなりホテルビジネスは低迷の域に入ってし まいました。その後、アベノミクス効果や国策として取り組 んだ「観光立国ニッポン」に向けた活動により、外国人客 も徐々に増えてきた矢先、2011 年 3 月11日の東日本大 震災により再度低迷の時期を迎えてしまいました。その後 の観光立国政策により2013 年の1000 万人の達成を機に 2020 年年間 4000 万人を目標達成直前まで行きましたが 2020 年初めからかつて経験した事のない新型コロナ問題 が勃発して今日を迎えております。 なぜ、このようなお話をするかと言うと、この講座に多く のホテリエの方が参加されていらっしゃいますが、今だから こそ日本のホテルの発展の歴史と危機を 再確認していた だきたいと思ったからです。 部門間で互いに補えた相関関係崩壊 次にホテルビジネスの現状についてですが、コロナに より2019 年 10月、11月のオキュパンシーは 35%、20% となりました。秋口には前年対比で外国人客が 95%、 97%ダウンしました。シティ、ビジネス、旅館の各業態に おいても打撃を受けました。そしてついに1ケタ台のオキュ パンシーとなり、まさに未知との遭遇でした。閑散としたロ ビーなど、このままではホテルは潰れてしまうのではない かと思わせるほどの状況であり、今もなお厳しい状況が 続いています。これまでは宿泊が不調でもFB 部門や宴 会、婚礼でカバーすることができました。逆にFB が不 調のときは宿泊部門が補うなど、助け合いの相関関係で 乗り切ってきました。ところが宴会や婚礼の開催中止や 延期が相次ぎ、これまでのように相関関係が利かない、 厳しい現状に直面しています。 この現状を打破するためのアフターコロナの課題につき まして6 項目ほど掲げました。「黒字化と経費削減」「雇 用の確保」「従業員のモチベーションの維持」「働き方 の改革」「IT、AIとの共存」「政府支援の活用」です。 中でも林先生がお話されました「IT、AIとの共存」は 重要な課題です。 今ではレストランでインカムを使った誘導をする姿は当た り前となりましたが、ホテルによっては目と目を見てホスピタ リティを高揚させていくことを重視していましたので、イン カムを使うことに否定的でした。 ところがインカムを使った 方が効率的でお客さまに不快感を与えるものではないと いうことに気づいたのです。このように明日にでもできる小 さなことを見直し、変えていく気持ちを持つことが大切で す。また心ビジネス、人に心と接することを求めてホテル 業界に就職された新卒者は、入社早々、自宅待機となり なりました。モチベーションをどのように維持していくことが できるのか心配しています。 「日本のおもてなし」は不滅なのか? 課題解決に向けた重要事項の最後としてとして日本の おもてなしは不滅であるのかを、考える絶好の機会だと 思います。そのために原点に立ち返り、どうやっておもて なしの心を提供するのか、また“おもてなし”というもの ホテル業界 課題解決に向けて の重要事項 ㈱ホテルオークラ東京 前会長 清原當博氏 第Ⅰ部 講演の部

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