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30 これから求められるホテルエンジニアリングに不可欠な気づきのセンス 熱工学や宇宙工学など産業界にはさまざまな工学が溢れている。しかしホスピタリティ精神を軸としたホテルや旅館に おける工学は存在していなかった。そこに新たな学問として生まれたのが、㈱タップ 林 悦男会長が定義した「ホスピ タリティサービス工学」だ。安全・安心・清潔・エコ・コンビニエンスをベースにお客様にとってより良い快適な空間 と滞在を提供し、宿泊施設においての生産性向上に欠かせない学問であり、宿泊業およびホスピタリティ産業のさらな る成長に不可欠なものである。 ~工学は新しい価値を創造しホテルサービスを 変えていくパイオニアなり~ 【日本工学院ホテルコース特別講義】2021年1月21日 ホスピタリティサービス工学という視点 G7で最下位の観光業GDP 今回の講座では「我が国の IT 人材の動向と育成」を テーマにお話をいたします。 まず始めに観光庁が発表した「明日の日本を支える観光 ビジョン」によると、安倍内閣 6 年間の成果として訪日 外国人旅行者数は2012 年の約 3.7 倍増の 3118 万 人、消費額は約 4.2 倍増の4.5 兆円に達しました。 2018 年時点では観光収入は世界 9 位、訪日客数は フランス、スペインに次いで3 位となりました。しかしなが ら日本のGDPはアメリカ、中国に次いで3 位にランキン グされているのに、観光収入が世界 9 位ということは、ま だ伸びしろが充分にあるということです。 2019年の日本人および訪日外国人による旅行消費額 は約 28 兆円で、日本のGDP(名目553.7 兆円)の5% となり、観光業が日本の産業の中核へと着実に推移して います。国土交通省の観光白書によれば観光収入は間 違えなく増えると予測しています。しかしGDPの観点から ではGDP12.5%(約 70 兆円)の自動車産業と比較す ると、単純に一人あたりの生産性は自動車産業の1537 万円に対して観光業は707 万円と2 倍以上の開きが見 られます。観光業が日本の産業の中核になるためには私 たち宿泊業も、もっと生産性を高めていかなければいけな いということなのです。 経済産業省は「IT 人材の最新動向と将来設計(平 成 28 年)」において、『産業界で大型の IT 関連投資が 続くことや、昨今の情報セキュリティなどに対するニーズの 増大を契機に、IT 人材の不足が改めて課題となっていま す。ビッグデータ、IoTなどの新しい技術やサービスの登 場により、今後ますます IT 利活用の高度化・多様化が 進展することが予測され、中長期的にもITに対する需要 は引き続き増加する傾向が高いと見込まれます。 しかし、『我が国の労働人口(特に若年人口)は減少 傾向が見込まれており、今後、IT 人材の獲得は現在以 上に難しくなると考えられます。IT需要が拡大する一方で、 国内の人材供給力が低下し、IT 人材不足は今後より一 層深刻化する可能性がります。 ITの我が国産業の成長にとっての重要性を踏まえると、 今後も十分なIT 人材を確保することは、我が国にとって 極めて重要な課題であるといえます』と提言しています。 さらに観光産業の人材育成は重要な柱として位置づ け、我が国の観光産業の国際競争力を高めていくために は IT 利活用の人材育成が必要であると捉えています。 同省のデータによりますと、国内のユーザ企業における IT 利活用人材は2030 年には24.3 万人必要とされ、こ のまま推移すると13.2 万人ほど不足すると報告されてい ます。 サービス産業・宿泊施設におけるIT 利活用して生産 性を上げていかなければいけません。今やGDP 就業人 口の7 割強を占めている日本のサービス業界ですが、残 念ながら一人あたりの生産性はG7(先進 7カ国)の中 で最下位です。G7のサービス産業平均が日本円に換算 して約 420 万円に対して、日本は285 万円と135 万 円の開きがあります ホスピタリティとサービスの違いを明確に ホスピタリティサービス工学を学ぶためには“ ホスピタリ ティとは何か”を知らなければなりません。ホスピタリティは、 主にホテルやレストランなどで接客業に必要なものと考えら れてきましたが、日本ホスピタリティ推進協会によると「ホ スピタリティとは接客・接遇の場面だけで発揮されるもの ではなく、人と人、人とモノ、人と社会、人と自然などの 関わりにおいて具現化させるものである」とされています。

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