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JARC LIVE 27 【宿泊施設ができる SDGs】 第一弾 連載 本来コロナがなければ開催されていた東京 2020オリン ピック・パラリンピック。このオリンピックこそが日本の宿泊 施設が立ち遅れている世界基準の食のサステナブル対応 に直面するはずでした。 しかし、コロナ禍での一年間の延期、そして、現在も開 催自体が危ぶまれていますが、例え開催されたとしても現在 の感染状況からすると海外からの観光客はゼロ、関係者も 最小限という状況でしょう。そうなると食の対応がキチンと担 保された選手村と一部のホテルに限定されますので、食の サステナブル対応の認知普及は、残念ながら進まない状況 となりました。 宿泊施設ではストローのペーパー化、フードロス、プラス ティック使用の削減などSDGs への取り組みは進んでいま すが、残念ながら食に関するサステナブルの取り組みは、 まだまだ遅れているのです。 最たるものが日本の食の売りの一つであるシーフードの サステナブル対応です。将来も魚を食べ続けていくことが できるように、水産資源や環境に配慮し適切に管理された MSC 認証を取得した漁業で獲られた水産物、あるいは環 境と社会への影響を最小限に抑えたASC 認証を取得した 養殖場で育てられた水産物を「サステナブル・シーフード」 といいます。SDGsの17の目標のうち、14番目の目標 “ 海 の豊かさを守ろう”で水産資源の保全が謳われています。 MSC・ASCの認証制度は目標 14の達成に最も有効な 方法の一つとされています。 世界を見ると、ヒースロー空港(イギリス)は2019 年 6 月からサステナブル・シーフード認定空港となました。空港 で提供される20 種以上の魚介料理年間 400 万食分のす べてをサステナブル・シーフードに変更したのです。この話 を聞いて海外の話ですよね!と思うのはまちがいで、実は、 皆様の身近なところで進んでいるのです。 日本マクドナルドは2019 年 10月28日、人気メニュー である「フィレオフィッシュ」でが国際漁業 NGOの海洋 管理協議会(MSC)が管理している持続可能な漁業認 証「MSC CoC 認証」を取得したと発表しました。日本で 販売するフィレオフィッシュのパッケージにMSCの「海のエ コラベル」が入っています。そればかりでなく、2018 年 6 月27日からトレイマットから始まり、コーヒーカップなどすべて FSC(Forest Stewardship Council®、森林管理協 議会)認証の紙製に切り替えました。 FSC認証とは“ 責任ある森林管理から生産される木材と その製品を識別し、それを消費者に届けること”で、責任 ある森林管理を消費者が支える仕組みを作っています。国 内の宿泊施設ではストローのペーパー化は進んでいますが、 FSC認証用紙の紙を使うところまで至っていません。 SDGsもさまざまなメディアで取り上げられていますが、食 のサステナブル対応のグローバルレベルの対応は、驚くほ ど遅れているのです。 最たる事例が、昨年のコロナ禍にMSCの団体関係者 と情報交換した際に、オリンピックを受け入れる都内のホテ ルでMSC CoC 認証(CoC 認証とは、サプライチェーン 認証でMSCの食材を扱ったり、流通する企業も必要な認 証)を所有しているホテルは「新宿パークハイアット」と「キ ンプトン新宿東京」の二軒のみでした。 今回は第一弾としてまず、食のサステナブルフードの現状 をお届けしました。今後はアフターコロナに向けて宿泊施設 におけるさまざまSDGs への取り組みをお伝えしていきます。 まずは、一歩から取り組むことです。 高橋 敏也氏 JARC 事務局長 with コロナ &SDGs プロジェクトチーム チーフ・コーディネーター MSC(Marine Stewardship Council:海洋管理協議会)(https://www.msc. org/jp) 水産養殖管理協議会(ASC)(https://www.asc-aqua.org/ja/)FSC (Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)(https://jp.fsc.org/jp-jp) 〜世界のサステナブルフードの現状〜 東京オリンピックで求められた食材調達基準こそが、世界のサステナブルフードのグローバル・スタンダードなのです。 日本の宿泊施設のスタンダードは、実はまだまだ世界に届いていないのです。 2020+1東京オリンピックからはじまる食のサステナブル対応の道のり 1

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