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33 たことが良く理解されるだろう。 こうした「庭」という人間と自然との関係性 を創造する伝統的な主題に対し、これまで多く の作庭家が様々な優れた意匠を創造してきた。 昭和時代には重森三玲やイサム・ノグチなどが 独創的な庭園を創造してきたが、現代に生きる 我々にとっても、そろそろ新しい庭園の意匠が 必要になっているように思われる。 そうした要請から生まれた庭園の一つの現代 的な解釈が、アート・ビオトープ那須に隣接す る敷地にこの度誕生したボタニカルガーデン 「水庭」である。そのデザインは、日本建築学 会賞(2009 年)、第12 回ヴェネチア・ビエンナー レ国際建築展金獅子賞(2010 年)など、数々 の賞を受賞している新進気鋭の建築家・石上純 也が手掛けた。 柱も壁もないこの新しい“建築”は、多様な 生態系に合わせながら刻々と変化する自然への 敬意から生まれたものである。こうした変化を 前提とした「水庭」に込められた思想には、「行 く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあ らず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ 結びて久しくとゞまることなし」と述べた鴨長 明の『方丈記』に代表される日本人の心性の根 底に流れる諦観の意識が存在しているように感 じられる。 この庭は、パリのカルティエ現代芸術財団で 開催された「石上純也 自由な建築」展(2018 年3月30日~6月10日)でも紹介され、人々から の大きな注目を集めた。それはこの庭が、日本 人にとっての庭という特別な主題を受け継ぎつ つ、それを現代的な思索のための意匠へと昇華 したことが高く評価されたからであろう。この 庭が未来の人々に開かれた場所として、新しい 観光に寄与していくことを期待したい。 北山 ひとみ (株式会社二期リゾート代表取締役) 東京生まれ。1980年、株式会社栄光の創立に携わり、 経営企画室取締役・第二事業本部長を経て1986年、「二 期倶楽部」をオープン(2018年閉館)。その他、長期滞 在型アートレジデンス「アート・ビオトープ那須」、東京・ 千鳥ヶ淵のライブラリーカフェ「ギャラリー册」の運 営のほか、ゲストハウス「沼津倶楽部」などのホテル 運営受託事業を手掛ける。現在、特定非営利活動法人 アート・ビオトープ理事長、特定非営利活動法人デザ インニッポンの会理事、特定非営利活動法人21・子育 て応援の会理事、特定非営利活動法人保育:子育てアド バイザー協会理事。著書に『人分けの小道』(2014年、 ライフデザインブックス)。

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