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14 地球上から人の流れが消滅しない限り宿泊業 は存在し続け、地方創生においても地方経済の ハブとして宿泊業の存在価値や重要性は年々増 していくことでしょう。 しかし、10年間で国内旅行消費が約30%減少 し、なんとか訪日外国人の需要で一息ついてい るのが地方観光の現状です。この間、地方旅館 業の軒数も約30%減少しました。今後一層政策 の重要性が高まってくることになります。 例えば、今、宿泊業の労働生産性向上が叫ば れています。生産人口が減少する時代にGDPを 維持するためには、生産性向上が必須であり、 人口増加時代とは違った発想とやり方を進めて いかねばなりません。 また、宿泊業の生産性を考える際に、稼働率 の高い都市部のホテルや旅館と、稼働率の低い 地方の小規模旅館は分けて考えるべきです。生 産性が低いのは、2万軒以上に及ぶ地方の小規 模旅館業のためです。従業員の確保も難しくな り、家族経営の旅館は休業日を増やさなくては ならなくなっています。しかし、これまでの政 策は都市型のホテルや旅館にばかり向いていな かったでしょうか。 一方、地方の中山間地に目を向ければ、5千 人にも及ぶ地域おこし協力隊の一部の皆さん が、空き民家を改修して小さな宿泊業を開業し ています。宿泊業だけでは収入が不足するため、 二足の草鞋を履き、地方の魅力を発信していま す。こうした状況で、自治体は空き民家を紹介 するのではなく、後継者のいない宿泊業の事業 承継に結び付けていくことはできないでしょう か。事業者が個人事業主であれば、法人成りを し、事業譲渡とすれば不動産売買に比べて節税 にもなります。 地方創生のため、「地方から宿泊業の灯を消 さない」ことを目指し、小規模旅館業にも政策 が及ぶことを期待していたいと思います。 アドバイザリーボード 公立大学法人 高崎経済大学地域政策学部准教授 株式会社 井門観光研究所取締役 井門 隆夫

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